東京高等裁判所 昭和55年(行ケ)282号 判決
争いのない事実によれば、本願は、旧法第九条第一項の規定により分割出願されたものであるが、その原出願(特願昭三四―三四六八号)は、昭和三四年二月三日に出願され、昭和三五年一〇月三日に特公昭三五―一四四六八号として出願公告されたことおよび原出願については旧法第七五条第五項の規定により昭和四九年四月一九日付で明細書の訂正が命ぜられ、これに応じて原告は、その指定期間内に同年五月二〇日付で原出願につき訂正書を提出すると同時に旧法施行規則第四四条に規定するとおり原出願から分割して本願発明を新たに出願したものであることが明らかである。
そして、旧法第九条第一項の規定による分割出願において、もとの出願から分割して新たな出願とすることができる発明は、特許制度の趣旨に鑑み、もとの出願の願書に添付した明細書の特許請求の範囲に記載されたものに限られず、その要旨とする技術的事項のすべてがその発明の属する技術分野における通常の技術的知識を有する者においてこれを正確に理解し、かつ、容易に実施することができる程度に記載されているならば、右明細書の発明の詳細なる説明ないし右願書に添付した図面に記載されているものであつても差し支えないと解するのが相当である(最高裁昭和五三年(行ツ)第一〇一号昭和五五年一二月一八日判決参照)。
したがつて、本件出願は適法に分割されたものであり、審決が、「原出願の特許請求の範囲にはただ一つの発明しか記載されておらず、しかも、原出願について明細書又は図面の訂正をすることができる時又は期間内に本願が分割出願されたものではない。」と判断して、出願日の遡及を認めなかつたのは誤りというべきである。
右の誤りが、審決の結論に影響を及ぼすべきものであることは明らかであるから、審決は、違法として取消しを免れない。
〔編註〕 本件と同趣旨の判例として次のものがある。
昭和五六年三月一〇日東高民六判・昭和五五年(行ケ)二八三号
昭和五六年四月二一日東高民六判・昭和五五年(行ケ)三三八号
昭和五六年四月二一日東高民六判・昭和五五年(行ケ)三三九号